院長室

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「グッド・バイ」/「1917」

今回は久々の洋ちゃん主演映画とアカデミー賞逃したで賞(笑)映画

2本を紹介しましょう。

 

まずは我らが大泉洋主演「グッド・バイ」。終戦直後の忙しない時代、

女性にだらしない主人公が妻子と真っ当に暮らすため偽の妻を仕立てて

愛人達と別れられるようあれこれ画策する…というコメディ。原作は

太宰治ですが、未完のためアレンジし舞台化したものの映画化、だ

そうです。

 

で、だらしない主人公を大泉洋さん、ガサツで金にうるさい偽の妻を

小池栄子さんが演じます。終戦直後の町並みの再現度は結構なもので

入り込みやすい…かと思いきや、意外にも洋ちゃんと小池さんがそれを

拒むんですわ。なんせ2人とも人の良さがにじみ出ちゃってる。(^ ^;)

特に小池さんはダミ声で話す設定なんですが、これがコントっぽくて

どうもね。洋ちゃんもコメディパートはさすがの演技なんですが、

シリアスパートがイマイチ。まあこれは演出の問題も多分にあると

思うけど。

 

そして主人公に一方的に別れを告げられる女性達や本妻も結構性格が

悪くて全く同情できず、結果主人公のだらしなさが薄味になりそれに

協力する偽妻の説得力も希薄になる、という中途半端な感じになっ

ちゃってます。まあ洋ちゃん好きなら観ても損ないかな、くらいの

作品ですかね。

 

そして圧倒的有利を覆されてアカデミー賞を逃した「1917」。

第1次世界大戦中、ドイツ軍の罠を知らせるために最前線で戦う

イギリス兵に命を賭けて伝令する、というお話。実際に戦地にいた

方の伝聞から構築されたそうです。非常にシンプルなんですが、

全編ワンカットで撮られたかのような映像が話題になっています。

 

確かにこれは凄い。実際のワンシーン撮影は最長で8分ちょっと

らしいのですが、どこがつなぎ目か分からないです。常に主人公の

背後を追いかけている視点なので、自分も一緒にいつ銃撃されるか

分からない戦地を駆けていく緊張感が味わえます。ヘタなホラーより

心臓に悪いっす。(笑)

 

ただこの作品の特筆すべき部分はその映像技術より、脚本の妙だと

思います。任務を請け負う冒頭シーンからラストまで風景や心情が

見事に対比あるいは相似で表現され、同時にこれで完結しない戦争

への虚無感も克明に描きます。このある意味数学的な構成が戦争の

無慈悲さを表しているようにも感じました。お、なんか賢そうな

文になったぞい。

 

コロナウィルスの影響は多方面に出ていますが、映画館が空いて

いるのは僕にとって嬉しい誤算。でもなんか診療もヒマになってる

気がするけど、そっち方面は見ないでおきますぞい。

2020年3月2日 月曜日

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「ナイブズ・アウト」/「前田建設F営業部」

アカデミー賞受賞作品ばかりが目立っておりますが、こちらも

侮れませんぞ、という2作品。

 

まずは「ナイブズ・アウト」。著名な高齢ミステリー作家が豪奢な

自宅で死体で発見される。自殺と見られるも探偵に匿名の捜査依頼

が届き…というお話。これだけで白メシ2杯はいけそうですが(笑)

単にミステリー好きに向けた映画ではないのが特徴。

 

古めかしい館も、遺産が欲しくて堪らない何か隠してそうな家族も、

無意味にカッコつける名探偵も、無能な警察も(笑)すべて古典的

ミステリーに不可欠なツールなのですが、これが既にミスリード。

序盤でほぼ事件の全貌は明らかになってしまい、なんだコロンボ方式

か、と思わせるのもこれまたミスリード、という驚きの作品です。

 

しっかり伏線も張られており、俳優陣の名演もさることながら練りに

練った脚本が一番の見所です。ドンデン返しのためだけの無理くりな

トリックに走りがちな昨今、これを完全オリジナルでやってのけた

手腕はアツデミー賞(←ナニソレ)では何らかの賞を獲得すること間違い

ないでしょう。

 

そして「前田建設ファンタジー営業部」。いやこれも凄いぞ。ある

建設会社がPRとして空想世界の建築物を現代の技術で実際に作ったと

したらどうなるか、というのをシミュレーションする企画を立ち上げ

ます。最初はイヤイヤだった面子も次第に熱くなり…というお話。

今回はマジンガーZの格納庫を作ります。(笑)

 

バカバカしいんだけど、何故か泣ける。マジンガーZを知らないと

分からない単語も出ては来ますが、そんなことはあまり問題になら

ないくらいブレストファイヤーなんです。あ、熱いってことね。(^ ^)

 

実は前田建設もファンタジー営業部も実在しておりホームページ

あります。書籍化、舞台化もされているそうで、実は人気のコンテンツ

のようです。僕も本作を観るまで知らんかった。悔やまれるぜ。

撮影は本社の建物や工事現場、社員さん(!)を使用しておりリアル

さは半端ないです。現実と比べれば随分脚色されているそうですが、

これは下町ロケットより面白いかもよ。観てないけど。(オイ)

 

主演は最近急に上手くなった高杉真宙さん、脇を上地雄輔さんや、

おぎやはぎの小木博明さん、岸井ゆきのさん、六角精児さん、と

何となくコメディー寄りではありますが、これがまた良い雰囲気を

出しているのです。なんと永井豪先生もチラッと出演されております。

これもまたアツデミー賞では(略)、、マジンガーZ好きには失禁

モノですが、そうでなくても熱くなれる良作です。

 

多分、2作品ともそんなに長く上映されないでしょうから、もし

興味を持ったら即映画館へ、マジンゴー!です。(^ ^)

2020年2月17日 月曜日

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「パラサイト」/「嘘八百2」

あれ?アイツ、もう映画観なくなったの?と思った方、安心して

ください、履い…じゃなくて観てますよ。ただ最近めぼしい作品

がなくてね。やっとこれから増えそうです。

 

まずは「パラサイト 半地下の家族」という韓国の映画。監督が

ポン・ジュノさんで主演にソン・ガンホさんという鉄板コンビの

作品です。ポン・ジュノさんの作品は1作を除きすべてオリジナル

脚本でかつ全てジャンルが違うという特徴があり、どれも快作

です。ソン・ガンホさんも韓国映画界随一の俳優さんでつまり

本作も期待せざるを得ないわけなんですね。

 

公開は結構早く上映館も少なかったんですが、やはりジワジワ

評判を呼び現在も絶賛上映中です。今では木曽川でも稲沢でも

やってますわ。これすなわち傑作、と言って良いでしょう。

個人的には少し賛同しかねる部分もありますが、まあ些末な

ことで作品の完成度を損なうほどのことではありません。

 

で、どんな内容かって?いやこれがまた是非何の情報もない

まま観て欲しいんですよ。ブラックユーモアこそ効いてますが

コメディではないし、シリアスに振ってもないし…で要約

しづらいんです。ただもし鑑賞されるなら“階段”や“坂”に着目

すると面白いです。オススメです。

 

そしてまさかの続編「嘘八百 京町ロワイヤル」です。日本の

骨董品を扱う詐欺師と贋作師の騙し合いが面白かった前作を

どう転がすのかが注目でした。

 

主演は中井貴一さんと佐々木蔵之介さん。お二人とも俳優と

して脂が乗ってるというか、特に近年の中井さんはそれこそ

芸術品の域に達しつつあるなと感じる次第で、実は今作も中井

さん見たさで鑑賞したってのが本心です。基本的に続編には

ネガティブな僕は内容は大して期待してませんでした。

 

ほら、やった。(笑)前作鑑賞者にはニヤニヤする部分はある

ものの、そもそも本作から観る人なんていないんだからもう

少し仕掛けを作らないと、続編を作る意義が薄れちゃうわけ

ですよ。なんせ詐欺師が主人公なんだから、勧善懲悪的な話

なんて求めてないのよね。でも前作で「まっとうに生きるぜ!」

ってラストにしちゃってるもんだからどうにも窮屈な展開に

ならざるを得ない。続編って難しいね。

 

まあ演者が巧みなので平均点以上ではありますが、中井さんや

佐々木さんの凄みをもっと観たかったし、前野朋哉さんと

アホの坂田師匠(笑)の扱いがもったいなかったなと思います。

脚本もツッコミどころが目立つので、全体的に突貫工事的な

印象が拭えないかな。さらに続編も匂わせてますが、ロッキー化

しないよう祈ります。はっ?!まさかその先に「嘘八百

ザ・ファイナル」で巻き返すことまで計算ずみ?!ねーか。

 

そんなわけで今年も映画好きオジサンの身勝手な批評がしばしば

投稿されますのでお付き合いくだされば幸いです。(^ ^)

2020年2月6日 木曜日

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「ジョーカー」/「ジョン・ウィック3」

色々な意味で問題、話題となっているこの2作品、皆さんはもう観ました

でしょうか?

 

ジョーカーはバットマンの宿敵で世界で最も有名なヴィランの一人ですが、

つまりコミックの悪役キャラを単独で映画にしたのがこの「ジョーカー」

なんですね。ジョーカーはピエロみたいなメイクで狂気に満ちた、印象深い

キャラですが、今作ではこれまで描かれてきた彼ではなく、全く新たな

ジョーカー像を構築しているのが特徴です。

 

製作サイドも、描きたいテーマにちょうどジョーカーというキャラがマッチ

したと言っている通りリブートでもリメイクでもなくオリジナルなジョーカー

で、かつ極めて社会的メッセージの濃い内容です。最初から狂っていたのでは

なく、真面目に生きても報われず、境遇により差別を受け、信じていた人には

裏切られ、権力者は無関心、という誰にでも起こりうる悲劇がジョーカーを

産みます。映画内でもシャレにならんくらい悲劇が重なるわけですが(^ ^;)、

ここにこそ今作の問題点があります。エロもグロもないのにR15指定なのは、

誰しも犯罪者になり得る、あるいはテロを起こせると思わせてしまう可能性が

あるからでしょう。

 

あまりに身近であるがゆえ、映画が進むにつれ他人事には思えなくなり、

生活に不満があれば社会にぶつけりゃいいじゃん!と思えてしまうのがコワイ。

舞台はバットマンでお馴染みの架空の都市ゴッサムシティで、幼き頃のブルース・

ウェインも登場したりしますが、まあそんなの関係ないくらい焦燥感に駆られる

こと請け合い。これも主演のホアキン・フェニックスさんの怪演のなせる業で

しょう。恐らくアカデミー賞を総ナメにするでしょうな。

 

精神をえぐる内容であるため、万人向けではありませんが、ホアキンの演技と

哀しくも美しいジョーカーの生き様は体験の価値アリです。

 

さてさて問題にも話題にもしているのは僕だけかも知れない(笑)「ジョン・

ウィック3」です。前作のレビューでも触れた通り、もう既にネタ映画と

化していますが今作もスゴカッタよ。ツッコミ所だけで構成していると言って

も過言ではないくらいで、一見さんお断り、どころか常連さんにも敷居を高く

する突っ走りぶり。いいねぇ、バカだねぇ。(笑)

 

そもそも引退した最強の殺し屋が組織を敵に回してバッタバッタ殺しまくる

というだけの映画をここまで引っ張るのに無理があるわけですが、今回は

必要以上にナイフや斧を投げてサツガイしたり、馬に乗りながらバイクの敵を

銃でサツガイしたり、はたまた犬を使役して連係プレーでサツガイしたりと

見せ場満載。どう?すごいっしょ?

 

挙げ句の果てに至近距離でタマをぶちこまれて屋上から落下し、「もう怒り

沸騰だぜぇ!」的ラストシーンで終わります。(あ、言っちゃった ^ ^;)

ここまでの紹介で燃えられる人は是非1作目から観て完結に備えるべきです。

滅茶苦茶なアクションですが、見せ方が上手い、というか狙ってるので

アクションバカにはタマランのですわ。しかしながらキアヌさんの衰えは

隠せず、スタントはまだしもマーシャルアーツはもう厳しいかな。暗殺者

設定なのに明らかに相手の方が動きがいいし、決め技はゴリ押しの力技

ばかりだし。「もっと強い銃を寄こせ!」とか言っちゃってるし。(笑)

 

ところで今作のラスボスには日本人設定のキャラがいるんですが、これが

またヘンテコな日本語を使ったり、青竜刀みたいな刀で戦ったり、忍者

みたいな動きで瞬間移動できたり(これを何故かキアヌもできちゃう!)、と

すんごく誤解されてる感が拭えない、、キアヌ氏、親日家だった、、よね?

 

食べるなキケン的意味では共通するが、観終わった後の反応は真逆となる

この2作、どっち観る?

2019年10月14日 月曜日

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「記憶にございません!」/「アド・アストラ」

大門未知子ばりに映画で失敗したくない僕は、結構事前リサーチを怠りません。

今回は、そんな僕が予告の段階で既に絶対に観る!と決めていた2作品です。

 

まずは御存知、三谷幸喜監督の新作「記憶にございません!」です。記憶を

失ってしまった嫌われ者の総理大臣が巻き起こすコメディ。いや、コレ最高

じゃん。一部では、現政権への風刺だとか、リアリティに欠ける、と言った

ピントのずれた批評がありますが、風刺も非現実性もまさにコメディの

醍醐味なんですよ。三谷作品に何を求めているんだか、と言いたくなりますが、

そういう点でもまさに本作はザ・喜劇です。

 

もう問答無用でお勧めですが、特に主演の中井貴一さんが素晴らしい。草刈

正雄さんや佐藤浩市さんといった邦画界の雄との共演にも負けていないどころか

抜きん出てますね。やや大袈裟に感じる演技はTVドラマでは時代劇くらいが

適当に感じますが、映画ではもう水を得た魚の如く楽しげに(?)泳いでいます。

こういう俳優さんを映画スターって言うんでしょうね。その妙技をぜひ劇場で

確認し爆笑して下さい!

 

さて、ブラッド・ピット主演の宇宙モノと聞いただけで体温が1℃くらい上昇し、

冷え症の治療に応用できるんじゃないかと興奮を抑えきれず鑑賞した「アド・

アストラ」ですが。

 

タイトルはラテン語で、英語では「to the stars」(=星の彼方へ)みたいな訳と

なります。原題そのままです。これは英断。この言葉は様々な場面で使用されて

いて「困難を伴う行程」というニュアンスも含みます。地球規模の電気トラブル

が海王星からの電気サージによるものと判明するも、これが16年前に消息を

絶った主人公の父親を隊長とする調査団に関係しているかも、しかも彼は生きて

いるかも、じゃあ主人公に火星からメッセージを送らせようぜ、というストーリー。

 

これだけ見ると、確かに困難な感じはあるものの、苦難を乗り越えて父と再会を

果たすSFアドベンチャーか?体温爆上げだぜー!(しつこい)と思いますが、

全然違いました。オラ、わくわくすっぞ!的展開はわずかで、本態は多分に

内省的な人間ドラマです。宇宙の無音、無機質、無慈悲さも助け、どちらかと

言うと静かな映画です。実際の行程よりむしろ主人公の内面的な成長に必要な

「困難さ」が丁寧に描かれます。

 

いやしかし、その主人公を演じるブラッド・ピットが神懸かってます。居るだけで

存在感があるのは昔からですが、そういうオーラを消しつつ地味な演技で2時間

惹きつける、ってのはもう離れ業でしょう。特に最後のシークエンスはそれまで

静かだったせいもあり、ワンカット、一言、がとても重厚です。エエもん観たよ。

映像もとても素晴らしく、ごく近い未来という設定を損なわないメカたちも地味に

良い。何より、これがジェームズ・グレイ監督のオリジナル脚本ってとこが

一番素晴らしい。

 

かたや腹を抱えて笑えるほっこりコメディで、一方は深い余韻を残す人間ドラマ、

どちらも掛け値なしに面白いので、是非両方鑑賞してみて下さい。正反対の

ような作品ですが、監督のオリジナル脚本で主演が超上手い、という共通点が

あります。リメイクや漫画の映画化を数字の取れる俳優で、という企画の多い

昨今、こういう映画作りは好感が持てます。(^ ^)

2019年9月26日 木曜日

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