院長室

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漢方薬解説-28 小青竜湯

“花粉症の漢方薬” と名を馳せているのが小青竜湯です。市販

されているほど身近ですが、よくよく考えてみると漢方薬が

発明された時代に花粉症なんてありません。アレルギーという

概念だって無いはずです。ということは…?!

 

・小青竜湯(ショウセイリュウトウ 19番)

構成:麻黄3g+桂皮3g+芍薬3g+甘草3g

+乾姜3g+半夏6g+細辛3g+五味子3g

 

意外と構成生薬数がありますね。見落としてはいけないのが

麻黄+桂皮の組合わせです。これは麻黄湯や葛根湯の基本

骨格にもなっていた、「発汗して解熱させる」コンビです。

つまり19番は基本的には悪寒発熱に使用する風邪薬なん

です。

 

ではなぜ花粉症に有効なんでしょうか?生薬構成の2段目に

秘密がありそうです。半夏(ハンゲ)が6gと多いですが、この

生薬に咳を抑える作用があります。細辛(サイシン)五味子(ゴミシ)

にも鎮咳作用があります。ということは咳がメインの風邪に

適応ということになりますね。さらに細辛、乾姜(カンキョウ)

は温める効果が強く、半夏、五味子は水分代謝を調整する

作用もあります。ならば「冷え」と「水っぽい」ことが適応

に加わりそうです。

 

よく、水道の水みたいな鼻水によい、なんて言われますが

鼻水を止めるというより「冷えて透明な水が出る」ことに

対する効果の結果と言えるでしょう。ここが花粉症の症状に

偶然マッチした、というのが正解です。重要なのは冷え

の有無です。冷えを契機に症状が出る、でも構いません。

当然抗アレルギー効果はありません。また、

 

・苓甘姜味辛夏仁湯(リョウカンキョウミシンゲニントウ 119番)

構成:茯苓+杏仁+甘草+乾姜+半夏+細辛+五味子

 

なんてのもあり、7種の生薬のうち後ろ5つが19番と

同様です。かつ麻黄+桂皮を含みませんので悪寒発熱には

効果は無いですが、19番の特徴を引き継いでいるため

副作用で麻黄が服用できない人の咳や鼻汁に使ったり

します。ちなみに7種の生薬の一文字ずつをつなげた命名

となっています。

 

小青竜湯はあくまでこのような適応なので、花粉症=

19番では無効例が出てしまいます。例えば目の充血や

鼻づまりがメインでは適応外ですよね。有名処方とは言え

短絡的な使用は避けるべきです。

2020年10月26日 月曜日

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重金属と栄養

栄養療法の邪魔者シリーズ(?)も今回が最後です。最後

のオオモノ、それが重金属です。

 

具体的には水銀や鉛などの蓄積を指します。水銀や鉛という

と工業排出物などによる公害を連想するかも知れません。

ゆえに自身にはあまり関係のないものだと思いがちです。

でも実は意外とこれらの害があり、特に栄養療法では代謝

を狂わせる原因となっています。

 

代謝とはある物質が別の物質に変化して利用されること

ですが、その過程で有用物だけでは無く有害物も出て

しまうので、解毒して排泄する仕組みも人体には備わって

います。大きな枠組みではこの解毒も含めて代謝と呼び

ます。その代謝にビタミンやミネラルが大きく関わるわけ

ですね。代謝は非常に細かくかつ複雑に仕組まれており、

あたかも大小様々な歯車が緻密に噛み合わさって作動して

いるかの様です。有害重金属はこの緻密な歯車に挟まって

動きを止めてしまい障害を引き起こす、というイメージ

です。邪魔くさいヤツですねー。

 

重金属障害の厄介なところは、それを確認できる検査が

少ない、という点です。血液検査では全く分かりません。

そこで、毛髪検査や特殊な尿検査などからその手掛かりを

つかもうとするのですが、コストの割りには正確性が

低かったりと、まだ信頼性のおける診断方法が確立して

いません。同時に治療法としてキレーション療法という

ものがあるのですが、これもコスト、副作用などの面

から個人的にはあまりオススメできないのが実情です。

 

診断も治療もあやふやなら、そもそも重金属障害なんて

無いんじゃないの?!というスルドイ突っ込みがありそう

ですが、実は目視で重金属障害を疑える病態があります。

それが歯科アマルガムです。これは平たく言えば「歯の

詰めもの」です。この詰めものに水銀が使用されている

場合があり、これを除去することで体調が良くなる場合

があるんです。さすがにウチでは判断も治療もできません

から、専門の歯科医師に依頼することになるのですが、

古い歯の詰めものには水銀が使用されていることが多い

ので、意外と重金属障害の原因となっていたりします。

盲点ですね。

 

あと、巨大魚は食物連鎖の結果、有害重金属を含む場合

があるので、マグロやカツオなどはあまり勧めません。

昔は鉄や必須脂肪酸の補給源として勧めていましたが、

重金属障害が注目されるようになって、これらの食材の

優先度は落ちました。ゴメンよ。

 

とまあ、栄養の過不足を正す栄養療法もただただ栄養を

補給すれば良いわけではない、ということが分かって

頂けたかと思います。どの時点でどこまでの検査するか、

はドクターによって考え方に差がありますが、少なくとも

これらの可能性を念頭に置いてやるべきではあります。

要は栄養障害の背景にも留意しよう、ってことですね。

2020年10月22日 木曜日

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炎症と栄養

ピロリ菌とカンジダ、腸内環境が栄養の吸収に及ぼす影響に

ついて紹介してきました。これだけでも大変なんですが、

現実はそれだけじゃねーんす。今回は炎症との関わりです。

 

炎症は風邪やケガなどの急性炎症とリウマチやアトピー、

あるいは原因がはっきりしない慢性炎症に分けられます。

炎症反応自体はそもそも必要な生理機能なので、急性炎症

はあまり栄養の吸収に影響ありません。問題になるのは

慢性炎症です。

 

単刀直入に言うと、炎症が持続することにより身体は

貧血傾向になるんです。現在でもコロナウィルスが大きな

問題となっていますが、古来よりヒトは感染症と戦って

きました。抗生物質が発見されてから実はまだ100年も

経っていません。最も死者を出してきたのが感染症なん

ですね。

 

感染症が何より怖いとインプットされているので、慢性の

炎症があると人体は「感染症ではないか?!」と疑い、

細菌が増えないような措置を取ります。ヒトの細胞同様に

細菌も増殖する際に鉄が必要なので、鉄を渡さないように

代謝が変化するんです。すると鉄の流通が変化し、貯蔵鉄

が増えて運搬鉄、利用鉄は低下してしまいます。これが

貧血症状に繋がるわけです。

 

栄養療法ではフェリチンというタンパク質の量を重要視

しますが、これはこのタンパク質が鉄の貯蔵量を反映する

ためです。フェリチンが低い時、仮にヘモグロビンが基準

範囲内であっても鉄不足であると判断しますが、もしも

慢性炎症があるとフェリチンは上昇してしまうので、鉄不足

の判断が困難になります。

 

では慢性炎症の原因は何でしょうか?そう、腸内環境の

悪化です。つまりピロリ菌やカンジダ感染があると腸内

環境が乱れ、それがそのまま慢性炎症となり鉄代謝障害が

起きる、ってスンポーです。もしこの状態で鉄を投与すると

敵にエサを与えるようなもので、さらに腸内環境は悪化

する可能性があります。

 

慢性炎症下では鉄不足の改善が難しい、また間違って鉄

投与すると悪化する、というのがポイントとなります。

例えば月経がある女性は鉄不足傾向ですし、成長期の子供

は鉄需要が高いので、治療を始める前に慢性炎症の有無を

しっかり見極めないといけません。

2020年10月19日 月曜日

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20日からです

10月20日から11月7日の立冬を迎えるまで、

「土用」の時期になります。

 

土用は、次の季節に向けて身体を整える時。

今回は、身体を秋から冬モードにする準備期間です。

 

この時期に活躍する内臓が「脾・胃」です。

(脾はなじみがないので、とりあえず胃と考えてください。)

冬に向けて「脾・胃」がせっせと身体を整えている時に、

食べ過ぎや飲み過ぎで飲食物がたくさん入ってくると、

そちらの処理にも力を注ぐことになります。

 

その結果「脾・胃」が疲れてしまい、身体を冬モードに

することができなくなって、冬に身体の不調が出やすく

なってしまうんですね。

 

ですから20日~立冬までは、

「お腹に負担をかけない」

ことが大切。

 

・食べ過ぎ

・飲み過ぎ

・添加物が多い食べ物

・味が濃いもの

・脂っこいもの

・甘いもの

などは控えましょう。量は腹八分目より少なくてもOKです。

 

また、東洋医学では胃への負担は他の内臓へも影響すると

考えます。控えてほしい上記のことは、胃に熱を持たせる

要因でもあります。

胃が熱を持つと、肺にその熱が伝わります。

肺は、鼻や皮ふ、気管支などと関係しているため、

鼻炎、皮膚の乾燥・かゆみ、のどの不快感、咳などの

症状を招くことにもなります。

 

さらに、胃の熱は腎にも負担をかけます。

腎は、膀胱、腰、骨、髪の毛、耳などと関係しているため、

膀胱炎や腰痛、耳鳴りなどにも少なからず影響します。

 

昔から「腹八分目に医者いらず」と言われるように、

お腹への負担は様々な不調を招く元になります。

とくに土用の時期は、より注意してくださいね。

2020年10月17日 土曜日

カテゴリー はりの部屋

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漢方薬解説-27 その他の補腎剤

前回、頻用処方の一つである八味地黄丸(7番)を紹介

しました。アンチエイジングの漢方薬、ではなく正確には

体内に水分を留める作用を有する薬であるともお伝えしま

した。この7番を代表するカテゴリーが「補腎剤」で、

まだ2種存在します。

 

・六味丸(ロクミガン 87番)

構成:地黄+山薬+山茱萸+茯苓+沢瀉+牡丹皮

 

・牛車腎気丸(ゴシャジンキガン 107番)

構成:地黄+山薬+山茱萸+茯苓+沢瀉+牡丹皮

+桂皮+附子+牛膝+車前子

 

今回分かり易くするためそれぞれのグラム数は省略して

います。構成を7番と比べてみると違いが一目瞭然です。

 

・八味地黄丸(ハチミジオウガン 7番)

構成:地黄+山薬+山茱萸+茯苓+沢瀉+牡丹皮

+桂皮+附子

 

87番は7番から桂皮と附子を抜いたもの、107番は

逆に7番に牛膝(ゴシツ)と車前子(シャゼンシ)を足したもの、

なんですね。そりゃ、同じグループになりますわな。

 

桂皮と附子はどちらも温める効果がありますから、それら

を抜いている87番は「水分が不足し冷えがない病態」に

適応となることが分かります。水分が足りないと身体を

冷ますことができなくなるので、逆にほてりを感じたり

します。いわゆる熱中症のような状態です。

 

107番に追加された牛膝と車前子はどちらも下肢の

むくみや血流を改善する効能があるので、7番の適応で

下肢に不調を感じる人向け、となります。整形外科領域

では腰部脊柱管狭窄症によく使用されますが、もちろん

7番の適応であることが大前提です。

 

ちなみに107番の命名は牛膝と車前子の頭文字を

7番の別名である腎気丸の前にくっつけただけです。

87番は7番から2つ生薬を引いているので正確には

六味地黄丸と言います。附子は温めるだけでなく鎮痛

効果もあるので、7番と107番は冷えると痛みが

出る場合にも良いですが、そもそも配合量が少ないので

冬場ではさらに附子だけ追加して処方することも多い

です。

 

以前、参耆剤というカテゴリーも紹介しましたが、

漢方薬を整理して理解する際には、カテゴリーごと

に特徴を覚えることも有用です。

2020年10月15日 木曜日

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