院長室

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漢方薬解説-21 半夏厚朴湯

最近少しマニアック傾向があったので、今回はシンプルかつメジャー

な処方の紹介といたしましょう。ノドや胸のつかえ感に使用される

半夏厚朴湯です。

 

・半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ 16番)

構成:半夏6g+生姜1g+茯苓5g+厚朴3g+蘇葉2g

 

さて、この生薬構成を「見たことあるな?」と思った方がいたら

嬉しくて失禁してしまいそうですが(笑)、六君子湯の紹介の時

に登場した小半夏加茯苓湯(21番)が含まれています。5種の

生薬のうち前3種が21番です。なので16番は小半夏加茯苓湯

加厚朴蘇葉とも言い換えられます。誰も言い換えんけど。

 

16番はノドや胸のつかえ感によいとされますが、21番は嘔気や

めまい動悸の薬ですから、追加された厚朴(コウボク)と蘇葉(ソヨウ)

がその効果を持つことになります。双方とも「散ずる」という

特性を持つため、“気” の滞りを取る効能があって、結果として

ノドや胸のつかえ感が改善する、という仕組みです。

 

もちろんベースは21番ですから嘔気やめまいがあって、さらに

つかえ感がある場合が最適となります。西洋医学ではノドのつまり

をヒステリー球と言って精神的過緊張症状と捉えるので、16番を

抗不安薬のように使用する向きがありますが、拡大解釈は無効例

を増やすだけなので注意が必要です。ちなみに中国では胸のつかえ

を梅核気(ばいかくき)とか咽中炙臠(いんちゅうしゃれん)と

表現していました。前者は梅の種がノドにあるように感じること、

後者はあぶった肉がノドに引っかかることで、まあ昔の中国人は

何と大袈裟なことかと感じますね。

 

胸の痞えや違和感というと小柴胡湯(9番)も同じような適応があり

ました。「そうだったよね!」って方がいたら嬉しくて失…(略)

実は9番と16番を合方した薬が存在します。その名も柴朴湯

(サイボクトウ 96番)。それぞれの処方名を一文字取って組み合わせた

ネーミングです。もともと9番には半夏と生姜が含まれるので、

小柴胡湯加茯苓厚朴蘇葉と言い換えることもできます。誰も(略)

それぞれのイイトコ取りをした、というより似たような目標が

あるので9番のパワーアップ版、と捉えた方が分かり易いかも

知れないですね。

 

9番も16番もメジャーな処方なので必要なら合方すればいいと

わざわざ96番を在庫することは少ないですが、合方した場合は

96番単独に比べ、半夏を大量に摂取することになるので口渇

などの副作用により配慮が必要です。

2020年8月6日 木曜日

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