院長室

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漢方薬解説-26 八味地黄丸

漢方薬が宣伝される際に「高齢の方にも安全です」みたいな

言われ方をすることがあり、今回紹介する漢方薬も高齢者に

頻繁に処方されます。さらに、特に症状が無くても「アンチ

エイジングの漢方薬」、ってまた聞こえの良い売り文句も

散見されます。ホントか?!

 

・八味地黄丸(ハチミジオウガン 7番)

構成:地黄6g+山薬3g+山茱萸3g

+茯苓3g+沢瀉3g+牡丹皮2.5g

+桂皮1g+附子0.5g

 

その名の通り8種類の生薬で構成され、地黄(ジオウ)が主役

の薬です。上段の3種、地黄+山薬(サンヤク)+山茱萸(サンシュユ)

はどれも体内に水分を保持する効能があり、つまり体内の水分

不足の方に適応となります。我々の体は加齢によって生理的に

タンパク質不足になり、その結果脱水傾向になります。この

慢性脱水に対し上記3種が有用なので、あたかも若返り薬の

ように言われるのです。

 

ただこれは古来言われてきたことでもあり、現代人が曲解

しているというわけではありません。漢方理論の中では、

「腎」は生まれ持った生命力、という意味で7番にはその

「腎」を補強する効能があるとされてきました。この効能を

持つカテゴリーを補腎剤と言いますが、7番はその代表で

あり「腎気丸」という別名を持つ所以です。

 

まあでも現代医学に照らし合わせれば、若返り薬なんて

ものはあるはずもなく、また水分保持が主たる効能なので

あれば抗加齢というよりは、加齢による症状を緩和する、

という程度に捉えた方が正確でしょう。拡大解釈して処方

するのは避けるべきですが、何より7番の主成分である

地黄は実は最も副作用報告の多い生薬でもあるのです。

一番多いのは悪心です。

 

高齢の方は既に胃腸症状があったり、もとより消化能力が

落ちていたりするので、盲目的に7番を満量処方すると

意外と不調を訴えるケースがあるので注意が必要なのです。

ただ適応がバッチリ合うと思いもよらない効果があったり

するのもしばしば経験します。まあ最初の問診不足だったり

もするんですけど。(^ ^;)

 

7番の残りの生薬では附子(ブシ)が目を引きます。これは

温めながら鎮痛する効果を持つので、脱水傾向で腰痛持ち、

風呂に入ると楽、なんて場合も重宝します。こういう

ケースも高齢者に多いですが、もちろん若い方でもOK

です。その他の補腎剤も重要なので次回紹介します。

2020年10月5日 月曜日

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