院長室

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漢方薬解説-9 薏苡仁湯

ウチで頻用している漢方薬です。その割にはあまりメジャーに

ならないので、僕の力不足を感じる次第でもあります。(笑)

薏苡仁(ヨクイニン)は水イボに使う、なんて言われているので皮膚

の漢方薬のように思われますが、全く違います。その構成を見て

みましょう。

 

・薏苡仁湯(ヨクイニントウ 52番)

構成:薏苡仁8g+麻黄4g+芍薬3g+甘草2g+蒼朮4g+当帰4g+桂皮3g

 

さあ、いかがでしょう?結構これまでに紹介してきた生薬の知識で

読み解くことができる構成になっています。薏苡仁+麻黄は関節炎

などに使いました。(麻杏薏甘湯)芍薬+甘草も筋肉の張りに

使いましたね。(芍薬甘草湯)そして蒼朮はむくみのある痛み

に使いました。(桂枝加朮附湯)ついでに桂皮+麻黄は発汗解熱

作用を有しました。(麻黄湯

 

当帰(トウキ)以外はこれまで解説してきた痛み関連の生薬を合わ

せたような構成になっているのが分かると思います。あまり良い

言い方ではないですが、痛みの“オールラウンダー” とでも言える

でしょうか。これに附子末を追加すればさらに…。当帰は血流

改善効果があるので、間接的に鎮痛に寄与します。

 

もちろん麻黄や甘草の過量には留意せねばなりませんが、僕が頻用

する理由がこのバランスの良さです。医師向けの雑誌インタビュー

なんかで「好きな処方はなんですか?」なんてショーモナイ質問を

されたりするんですが(^ ^;)、「そんなんねーし」と答えるのも

大人げないので宣伝も兼ねて薏苡仁湯を挙げることにしています。

 

ではこの全方位型の鎮痛処方が効かなかったらどうするのか。漢方

なんて効かねーじゃん、ではなくて「普通の痛みではない」と捉える

のです。例えばストレス絡みだったり、循環不全だったり。ここで

「気血水」という概念が登場するんですね。もちろんその処方も

用意されていますので、痛みをふるいに掛ける、という意味でも

広く使用されるべき処方かなと思います。

 

さて、我々の永遠のアイドル(?)志村けんさんのコロナウィルス

感染が報道されました。年齢的に高齢者の域ですので重症化しない

ことを祈るのみです。すっかり良くなって「だいじょぶだぁ」と

かまして欲しいです。

2020年3月26日 木曜日

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