院長室

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癌と闘う⑤

癌細胞に成長のルールがあるのならば、そこを逆手に

取るのが戦略の基本となります。まず糖を大量に必要と

するのであるから、当然糖質制限は必須です。しかし

癌細胞はそれに対抗して我々の筋肉を分解して糖に

変換することができるので、糖質制限だけだと筋肉が

痩せていってしまいます。


となるとタンパク補給も必須なのですが、カロリー不足

状態ではタンパク質はカロリーに変換されてしまいます

から、タンパク質本来の役目を果たせず、結局癌細胞に

対抗できません。ここが生活習慣病と少し違う所です。

生活習慣病ではどんどんタンパク質を壊す存在はいない

もんね。


となると糖質制限と並行してカロリー変換を効率化する

栄養素が武器になります。具体的にはビタミンB群と

マグネシウムです。またココナッツオイルは代謝の手間

が少なくカロリーになるし、血糖にもならないので、

とても有用です。これらでカロリー変換を維持できれば

タンパク質が活きてきます。たとえ癌細胞があっても

筋肉痩せや貧血が出づらくなります。


癌細胞そのものへの攻撃手段はどうでしょうか。これも

超甘党なのが利用できます。ビタミンCは糖と似た構造

なので、癌細胞はビタミンCを取り込みやすい性質があり

ます。ビタミンCは高濃度では癌細胞を縮小させる活性

酸素を出すので、ビタミンC大量投与が治療となり得る

のです。しかし、血中で高濃度を維持するには経口では

不可能なので点滴で行う必要があります。


あとはビタミンDが抗癌作用を有することが分かってい

ます。血中濃度が低い方は是非とも摂取すべき栄養素です。

また癌細胞は炎症も引き起こします。炎症があると栄養素

の吸収が妨げられるので、そのコントロールも必要です。

ビタミンDも抗炎症作用がありますが、EPAを追加する

とさらに良いですね。ココナッツオイルも抗炎症作用を

有するみたいですので、一石二鳥な存在で頼もしいです。


病態によって食事量にも差があるので、どのくらいこれら

の栄養素を使用するかは個人差があります。ただ少なくとも

栄養素が闘う武器になる、と言うことを知るのと知らない

のとでは患者さんの生活の質が雲泥の差になることは間違い

ないと思います。

2015年8月3日 月曜日

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