院長室

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「トイ・ストーリー4/天気の子」

この夏、超絶話題のアニメ映画2本です。両作とも尋常じゃないくらいの

期待値で、制作側も重々それを承知している上での解答に注目でした。ここ

まで期待が高ければ逆に満点解答はないわけで、ならばどこに振っていく

のかこそが関心のある部分です。

 

で、まずは「3」が奇跡の完成度でこのラスト以上のお話なんて創れるのか?!

とそれこそ全世界が注目した「トイ・ストーリー4」です。これまでの3作

でオモチャと子供の関係を通して、変わりゆくものと普遍的なものを対比させ

哀しさすらも表現し大人達までもを虜にしました。疑う余地のない傑作群

ですが、果たして今作のテーマは何か。

 

ズバリ「価値観の破壊」でしょう。こうあるべき、という既成概念から脱却

して思うままに生きなさい!というメッセージです。ははあん、そうきたか、と。

…っつうかそれしかないか、うん、とまあひとり納得したわけですが、これ

を押しつけないのがこの作品の優れたところで、もっと噛み砕けば「選択は

自由だぜ!」ってとこでしょうか。それを個性的なキャラクター達に言わせるん

だからさらに素敵なんですな。

 

映像技術の向上も目を見張るものがあり、本当にオモチャ箱のような映画です。

が、しかし。今作は禁忌にも触れています。これまでは人間に自分達の実態を

悟られないことに腐心するのがユニークだったのですが、なんとそのルールを

壊しています。良心的に見ればこれも制作側の「脱却」なのでしょうけど、

大きく賛否を分ける部分でしょう。ちなみに僕は否です。ここを死守しない

せいで緊張感のないトムとジェリーばりのドタバタ劇が展開されてしまうのが

残念。とてもとても良い作品ですが、ここが哀愁を誘う大事な要素でもある

ので、個人的には「3」まででよいかな、と。あ、トムとジェリーは大好きです。

 

さて3年前の「君の名は。」で社会現象まで巻き起こし、満を持して世に送り

出す新海誠監督の新作「天気の子」です。ここまでプレッシャーがあると僕なら

チビッて敵前逃亡しそうですが「君の名は。」に準じるのか、はたまた自ら

破壊してくるのか。前作も結構な賛否がありましたので今作もどちらに振っても

どうせ賛否は免れないでしょうから、まあ好きに作るんだろうな、とは思って

いました。

 

おお、好きに作りよった。(笑)前作は人格の入れ替わりや時間軸の移動など

多分にSF要素が強かったですが、今作もそれは踏襲されており、そこは

一見すると新鮮味がないのですが、前作以上に「個」に重きを置いています。

セカイなんてどうでもいいから好きな人のために突き進め!という。(オイオイ)

僕は(一応)大人なのでここはちょっと馴染めないのですが、いわゆる

セカイ系で行くんだ、という監督の決意は感じて清々しくはあります。

 

とは言え、セカイ系を否定するキャラクターもしっかり登場させバランスを

取るあたりは上手いなと感じます。そんな大人達に、周囲を置いてけぼりに

するほどの純粋さを思い出させる、という効果もあるでしょう。アップテンポ

な曲に合わせてシーンを展開させていく高揚感はもはや十八番になった

感があります。

 

うん、まあでも2回は観ないかな。(^ ^;)これは満足しなかった、というわけ

では決してなく監督さんが開き直ってターゲットを絞り切り僕はそのターゲット

ではなかった、ということ。美麗な映像表現は健在ですが、題材が雨なだけに

全体的に地味になってしまうのも物足りなさを感じさせてしまうかも知れません。

あと冒頭から企業名や商品名が実名でバンバン登場します。どえらい協賛が

集まってそれに応えなアカン感が凄いっす。密かにここが一番エグイ。(笑)

 

総じて、話題の2作は僕としては共に乗り切れなかったですが、しかしそもそも

強烈なプレッシャーを跳ね返して創作することはもの凄くエネルギーの必要な

ことでしょうから、両作のチャレンジ自体は肯定です。トイ・ストーリーはもう

続編はないでしょうが、新海監督はさらにまた次作のプレッシャーが増す

だろうと思うと、そこそこに留めるテクニックも必要な気もしたりして。

ああ、こういうつまらんオッサンに向けてのメッセージだったのか、と思い

返したりもして。

2019年7月25日 木曜日

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