院長室

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診断的治療とは

治療で効果を挙げるためには正確な診断が必要です。診断はいわば

治療の方向性をつけるための道しるべなので、間違った診断では治療

があらぬ方向へ行ってしまいます。

 

ただ現実には、診断は流動的です。患者さんにしてみれば「診断名は

何なのか?」「いつになったら良くなるのか?」この2点が最大の

関心事だと思います。しかしながら、診断が流動的であるが故に

どうしても「現時点では〜」と前置きがくっついてくるんですね。

 

例えば腰痛と足のしびれが続いている時、腰椎椎間板ヘルニアや

腰部脊柱管狭窄を疑ってMRI検査をしますが、もしそこで画像上異常

所見があっても、その所見が症状と必ずしも対応していないことが

あります。この場合、神経ブロック注射が選択される事がありますが、

これは神経周囲に麻酔薬を注入することで症状が軽減もしくは消失

するかを見ているのです。もしも100%症状が消えれば、MRIの

所見通り神経を圧迫することが原因と「診断」できるし、もしも

症状に変化がなければMRIの所見は症状と無関係と「診断」できます。

 

この例では「神経ブロック注射」という治療行為が重要な「診断」に

なっているので、診断手的治療と言います。たまに神経ブロックまで

されて変化がなかったと憤慨される方がいるのですが、決して無意味

ではありません。神経に原因がないと判断できるわけですから。漫然と

薬だけ処方し続けるのは論外ですが、なるべく正しい診断をつける

ために多くの角度から病態にアプローチしてみるのは有意義なことです。

 

特に慢性に経過している場合は、原因が複数あることも稀ではありません。

診断は流動的であること、検査や治療にどのような意味があるのか、を

予め伝えられるかが信頼関係の構築に重要ですし、治療のモチベーション

を維持するのにも極めて大切なことだと思っています。

2017年7月31日 月曜日

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