院長室

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糖質制限、賛成派?

すっかり市民権を得た糖質制限ですが、皆さん実践してますか?

僕も栄養療法をやっている以上、ここは避けて通れないので立場を

明らかにせねばなりませぬ。でも、正直賛否どっちでもない派です。

 

以前も書きましたが、糖質制限に限らず食事療法の是非は患者さんの

訴えが最優先事項です。生物学的、とか、人類の歴史的に、とかの

議論がありますが糖質制限は症状が治らなくて困っている方にとって

治療になり得るか、が一番重要な点です。誤解を恐れずに言えば、

糖質を摂っても全然不調にならない人は最初から無関係なんです。

 

薬を飲んでもリハビリをしても、手術をしても不調が続くからには

どこかに見えない原因が隠れているかも知れない、じゃあ血糖の変動

を招く糖質摂取に原因があるのではないか、糖質制限をしてみたら

どうか、というだけの話です。それで良くなるなら糖質との付き合い方

を変えることが治療になるよね、と言うことです。もちろん糖質制限の

双輪になるのがタンパク質の摂取であり、脂質利用効率上昇である

ので、糖質制限単独では不調を来すこともあるので注意が必要です。

 

何か不調が治らない場合は、治すメカニズムに問題があるわけで、その

治るメカニズムに必要な栄養素の過不足を論じることはとても自然です。

これが栄養療法の基本姿勢ですが、「治す」と言う行為自体にエネルギー

が必要なのでエネルギー産生系に不具合があれば根本的に治りにくい状態

だと言えます。専門的な用語を用いればATP産生系に問題があるという

ことになります。ATPと言うのはエネルギーの缶詰みたいなものなので、

ポパイのホウレン草缶が適当かな?(いや、古いか ^ ^:)

 

このATPを作るのに糖質が必要ではあるのですが、糖質はATPを作り易い

反面、効率は悪いのです。短時間で作れるけど量は作れない。つまり緊急

避難的な原料であると言うことです。なので、かなり逼迫した状態の患者

さんにとって極端な糖質制限は補給源を奪ってしまうことになるので、

むしろ危険です。でも慢性的不調でとりあえず日常生活は送れているので

あれば、2週間くらい糖質制限をチャレンジしてみるのは診断的にとても

有用です。

 

チャレンジ制限してみてどんな変化があるか、あるいはないのか。それに

よって提案する検査や治療も変わります。そこにこそ価値があります。

糖質制限が○なのか×なのか、はある意味患者さんを置いてけぼりにした

議論だと思います。

2017年5月22日 月曜日

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