一般的にアカデミー賞受賞作というと、文学的であったり、
壮大な物語であったっり、視覚効果がとんでもなかったり、
と聞く人が納得する理由があるものです。つまり超ド級B級
アクションとか、超クールな低予算ホラーコメディ(笑)
なんていう外角低めな作品はまず選ばれないわけですよ。
本作は堂々たるアカデミー賞受賞作ですが、はっきり言って
後者に分類される異色作です。
あまり前情報を入れずに観に行きましたが、そんな仕様なので
僕的にはもの凄い好物でしてとても満足しました。間違っても
「タイタニック」や「アバター」的な作品をイメージして劇場に
行ってはなりませんよ。(^ ^;)ストーリーは至ってシンプルで、
若い頃「バードマン」というヒーローもので名を馳せた俳優が、
再起をかけて舞台の芝居に挑む、というだけです。そこにプライドや、
家族や、さらに演じることの本質などなどが絡むわけですが、
幹となる命題は「何を望むか?」です。
こう書くと、なんかどこにでもありそうな映画ですが、言葉で
説明するのが実に難しい作品です。ネタバレになるから、と
いうのもありますが、それは見方によって解釈が変わってしまう
からです。ある人にはすっきりした爽やか成功ストーリーに
見えるかも知れないし、ある人にはとても切ない孤独な話に、
ある人にはブラックコメディに写るでしょう。これこそが
監督の狙いなのかも知れません。最近の映画はあまりにも
「望まれるもの」ばかり作っていないかい?観客もそれに慣ら
されていないかい?と問いかけられているようです。
さらに特筆すべきは全編切れ目がないように見える撮影方法です。
いわゆる長回しというやつですが、実際には超絶技巧の編集テク
の賜物だそうです。それでも実際にワンシーンずつは長いそうです。
これによりまさにお芝居を観ているかのようなリアリティを
感じられます。調べてみたら「ゼロ・グラビティ」でも長回し
撮影をやった人でした。これを体感するだけでも価値があります。
BGMもほぼジャズドラムのみという恐るべき仕様。しかしこれも
またとても素敵な効果をもたらしています。それはエンドロールに
まで及ぶという手の込みよう。ここもまた解釈が分かれるところ
です。
俳優陣は主演にマイケル・キートン、周囲をエドワード・ノートン、
エマ・ストーンが固めます。みんな過去にヒーローものに出演して
忘れられているという皮肉の効いた配役。(^ ^;)けれども
その演技はとても素晴らしい。作中の台詞も量産される「大作」
映画への皮肉も盛りだくさんで映画好きはクスッとすること
請け合い。撮影方法から、脚本、構成、音楽まで想像以上に練り
込まれた作品です。記録にも記憶にも残る名作です。