だいぶ一般にも定着してきた湿潤療法ですが、相変わらず
大病院では受け入れられないようです。当初は大学病院の
皮膚科や形成外科から「逃げて」きた患者さんが多かった
ものですが、最近は初めからネットで検索して受診される
方が殆どです。大病院は逃げていった事実を知らないし、
最初から受診されなくなったので、気付きの余地がないまま
なんでしょうね。これは何年も前から夏井先生が指摘されて
いたことですが、一向に変わる気配がありません。まあ僕
に実害はないからいいんですが。
さてそんな湿潤療法でもなかなか太刀打ちできない病態が
あります。それが慢性に経過した爪周囲炎です。ささくれ
なんかで爪の脇が化膿して腫れて痛くなるアレです。一般的
には排膿したり抗生剤使用で良くなるのですが、これを繰り返し、
慢性になって肉芽が過剰に盛り上がってしまうと途端に治り
が悪くなります。肉芽は皮膚ができる土台になるものなので、
通常はできていいんですが、過剰にできると上皮化を阻害します。
過剰肉芽にはステロイド外用がよく効くので、湿潤療法中にも
過剰肉芽に遭遇したらしばらくステロイド外用をしますが、
慢性爪周囲炎の不良肉芽は極めて反応が悪いです。恐らくこれは
爪が刺激となっていたり、そもそも体重が常にかかる部位だから
なのではないかと思います。こうなると湿潤療法で使う被覆材
をあて続けてもあまり変化がないし、結構痛いので患者さんの
日常生活動作に支障が出ます。
ここで登場するのがクエン酸。そう、あのすっぱいヤツです。
クエン酸には抗炎症効果と、収れん作用という引き締め効果が
ありこれを患部に塗布すると肉芽が縮むんですねー。もちろん
刺激となる爪があれば部分的に切除しますが、クエン酸がある
のとないのとでは、経過が全然違います。これで湿潤療法の
死角もカバーできるというものです。ただね、クエン酸を塗布
すると、とってもしみます。(^ ^;)