最近徐々に栄養療法の認知が広まってきて、問い合わせを頂くことも
増えました。ただ、その大部分は「認知症にナイアシンが効くと聞いた
のですが…」とか「自分は隠れ貧血だと思うのでヘム鉄を出してください。」
といったものです。実はこの方向性では間違う可能性があるのです。
漢方でもそうですが、「△△病なので〜〜散を出してください。」と
リクエストされることがあります。これらに共通するのは「病名」に対して
「薬」を処方して欲しい、ということです。その情報源はほぼ100%
インターネット上の「治った経験者情報」なんですが、残念ながら言われるが
ままに処方して改善したことはあまりありません。「なんだよ、栄養療法も
漢方も大したことないな。」という反応になってしまうわけですが(^ ^;)、
これはある意味当然です。答えは単純で、栄養療法も漢方も「病名」に対して
治療するものではないからです。
例えばリウマチという病名の人でも、関節が赤く腫れている人もいれば、
食欲が落ちて冷え切っている人もいます。認知症と思っている症状でも
ナイアシンを始めとしたビタミンB群不足の人もいれば、インスリン抵抗性
のためにエネルギー不足の人もいます。なので「病名」ではなく「病態」を
知らなければ、正しい処方選択はできないのですね。
これは鍵と鍵穴の関係に例えることができます。鍵(=栄養素や漢方薬)と
鍵穴の形状(=病態)がマッチしなければ、同じ扉でも開かない、という
ことです。そして鍵穴は人によって随分違いますし、経時的に変化することも
よくあります。それを見極めることが難しいんですけども。
「病名」はネット検索する上でも、医療者と患者の共通言語としても、
とても便利なんですが、こと治療に関しては結構邪魔くさいのですよ。(^ ^;)