これもこの時期たまに質問されるのですが、YesともNoとも言える
というか…。なぜこうどっちつかずの態度になってしまうかと言うと、
そもそも漢方薬は西洋医学的診断名に対応していないからです。
熱中症と言っても直ちに救急処置が必要な場合もあれば、少し食欲が
低下しているだけの場合もあります。救急処置が必要な場合には
漢方薬の登場する余地はありませんから、上記の答えはNoとなります。
食欲が低下している時に使う漢方薬は数々あるので、こちらであれば
答えはYesとなるわけです。この場合も決して「熱中症」に対して処方
しているわけではなく、あくまで「食欲低下」に対して処方している
だけです。
とは言え、熱中症に頻用される漢方薬があるのも事実です。例えば
清暑益気湯(セイショエッキトウ)という薬は有名で、この時期発注が重なって
在庫薄になることも。(^ ^;)では熱中症のどんな状態に使用するかと
言うと、胃腸症状がメインの場合です。この薬は四君子湯(シクンシトウ)
という食欲を出させる薬がベースになっているので、暑さで食欲低下
している人が適応です。四君子湯に熱をさます生薬や汗を止める生薬が
加わっているので熱中症向け、ということになっているのです。
では食欲低下がない比較的急性の熱中症はどうでしょうか。そんな時は
頭がのぼせて口がカラカラになりますよね。ならば熱を冷ましながら体を
潤せばよいので、そういう効能のある生薬を含む薬が適応になるわけです。
具体的には白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ)という薬がちょうどよいですね。
熱中症に限らず、診断名ではなく「どういう状態なのか」が漢方薬を選ぶ
上ではとても重要です。そしてその状態を的確に診断できるかが医療者側
のウデということになります。