西川美和監督と並ぶ僕にとっての10割バッター、内田けんじ監督の
最新作です。彼もまた寡作で今作でまだ監督3作目なんですが、彼の
作品の特徴は何と言っても練り込まれた脚本の妙です。上質の推理小説
のトリッキーさと随所にちりばめられたユーモアで、まだ2作ですが
すっかりファンになりました。
今回は人生設計もいい加減なだらしない男と、何事も計画的にきっちり
こなす男がひょんなことから入れ替わってしまうという物語。これまでの
トリッキーさはなりを潜め、どちらかというと人物描写に重きを置いた
作品になっています。題名の「メソッド」というのも、メソッド演技の
ことで、これは役柄に深く入り込んで自然な演技をすることらしいです。
強制的にでも自分の人生とは別の人生を味わうことで、これまでと違った
自分を見つける、というあたりが主題なんでしょう。それを引き立たせる
ために得意のトリッキーさをあえて抑えたと見るべきでしょうな。
とは言え伏線の張り方と回収の仕方は絶妙かつ爽快で、相変わらず完成度は
高いです。堺雅人と香川照之という日本を代表する名優というか怪優(^ ^;)
の演技もとても素晴らしく、やや長い尺ですが、まったく飽きさせません。
前作「アフタースクール」の方が総合店点は高いですが、良い作品です。
惜しむらくは、「夢売るふたり」というとんでもない映画と同時期に公開
されたことでしょうか。人物描写の勝負では西川監督に勝てっこないです
からねぇ。ただ、内田監督らしく最後はすっきり爽やかな気分になれるので、
気分良く映画館から出たければ「鍵泥棒のメソッド」、重い気分になっても
いいなら「夢売るふたり」ってとこでしょうか。(笑)