院長室

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「鍵泥棒のメソッド」

西川美和監督と並ぶ僕にとっての10割バッター、内田けんじ監督の

最新作です。彼もまた寡作で今作でまだ監督3作目なんですが、彼の

作品の特徴は何と言っても練り込まれた脚本の妙です。上質の推理小説

のトリッキーさと随所にちりばめられたユーモアで、まだ2作ですが

すっかりファンになりました。

 

今回は人生設計もいい加減なだらしない男と、何事も計画的にきっちり

こなす男がひょんなことから入れ替わってしまうという物語。これまでの

トリッキーさはなりを潜め、どちらかというと人物描写に重きを置いた

作品になっています。題名の「メソッド」というのも、メソッド演技の

ことで、これは役柄に深く入り込んで自然な演技をすることらしいです。

強制的にでも自分の人生とは別の人生を味わうことで、これまでと違った

自分を見つける、というあたりが主題なんでしょう。それを引き立たせる

ために得意のトリッキーさをあえて抑えたと見るべきでしょうな。

とは言え伏線の張り方と回収の仕方は絶妙かつ爽快で、相変わらず完成度は

高いです。堺雅人と香川照之という日本を代表する名優というか怪優(^ ^;)

の演技もとても素晴らしく、やや長い尺ですが、まったく飽きさせません。

 

前作「アフタースクール」の方が総合店点は高いですが、良い作品です。

惜しむらくは、「夢売るふたり」というとんでもない映画と同時期に公開

されたことでしょうか。人物描写の勝負では西川監督に勝てっこないです

からねぇ。ただ、内田監督らしく最後はすっきり爽やかな気分になれるので、

気分良く映画館から出たければ「鍵泥棒のメソッド」、重い気分になっても

いいなら「夢売るふたり」ってとこでしょうか。(笑)

2012年9月27日 木曜日

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