医師の間でもよく俎上に上る話題です。漢方嫌いの医師は
決まって「エビデンス(根拠)がないから」使えない、と
言います。漢方薬は同じ症状に全く違う薬を処方したり、
全然違う病名なのに同じ処方だったりするので、統計学に
不向きなんです。そうすると当然エビデンスも作りにくい
わけですが、ではだからと言って科学ではないのでしょうか?
この議論をする時にはまず科学とはなんぞや?から始めないと
いけません。我々は西洋医学にどっぷり漬かっていますから、
西洋医学で説明できない=非科学的と思いがちです。でも
これでは仮に西洋医学的理論が否定された時には科学が存在
しなくなってしまうことになります。本来科学的である、
ということは「Aの時は必ずB」というように、再現性がある
と言うことです。ですから、西洋医学以前の時代における
「病気はタタリだから先祖の供養をしておくと家内安全になる」
というのも実は立派な科学なんですね。今は病院でそんなこと
言ったら患者さんだけでなくスタッフも逃げちゃいますが。(笑)
翻って漢方を考えてみますと、2000年以上も前から、先輩
医師達が「科学的」に処方を編み出していったのだから、やはり
科学だと思うのです。ただし、漢方薬の作用機序など分子生物学的
に解明されていないことがほとんどですから、「西洋科学的」
ではない、ということになります。患者さんを診断する時には、
西洋医学的には〜〜だからA処方、漢方医学的には▽▽だから
B処方、ということでいいと思っています。
決して相反するものではなく、それぞれが人間の身体を科学した
結果なんですね。登山で頂上を目指すのにルートが何種類もあるかの
如く、目的は同じなんです。